G1ラボ - デジタルマーケティングを研究する為の備忘録

これからのデジタルマーケティングは技術と方法に加え、OfflineとOnline、HardwareとSoftware。6軸+αの時代を生きるデジタルマーケッター

「金融」を制するものがプラットフォームの覇権を握る

世の中にある大手サービスプロバイダは単一の機能ではなく、総合力の争いになってきています。いかに"プラットフォーム"として認知され、そこで様々な機能を利用してサービスを堪能してもらうかが重要になってきており、それを象徴するニュースがこのGmailでの送金サービスです。まだアメリカでの運用みたいですが、メールソフトで送るものがメールではなくお金という時代がやってきています。

 

AndroidのGmailアプリでお金のやりとりができるようになった | TechCrunch Japan

 

このような送金サービスと必ず背中合わせになるのがマネーロンダリングですね。国際間送金が簡単にできてしまい、またGmailのセキュリティで保証されたネットワークでクローズドな動きを取ることができてしまうので犯罪の未然防止が更に複雑になってきます。またその一方でGoogleアカウントを乗っ取られてしまえば簡単にお金を取られてしまうリスクがあります。その辺のテスト運用もかねてなのでしょうね、当面はアメリカ国内での運用でリスクを国内に絞り込んでいくのかなと推測しています。

 

■「お金」を使ってメガプラットフォーム入りを目指すGmail

ご存知の通り、Gmailはメールアプリでは世界最大のサービスなので、そのGmailが金融までサポートするようになった時、GmailのOS化にむけた環境は整い、いよいよ本格的にプラットフォーム化を目指して進んでいきそうな気がします。そしてWindowsMac OSAndroidiOSに続く第5のメガプラットフォームOSとなり、Androidと合体して世界最大のプラットフォームになっていくのは時間の問題とも言って良いかもしれません。実際、Chrome OSというGmailを搭載したOSをGoogleは先行して世の中に提供をしていますので、GoogleがOSを持ちたいという気持ちは明らかです。

 

■第1次ITガジェット戦争はハードウェアが主役

90年代からはじまったコンシュマー向けのITガジェットの歴史はPCとスマホPDA、ポケベル、PHSデジタルカメラ、デジタルミュージックプレーヤー、電子手帳などを駆逐して2強の座に君臨し現在に至っています。この経過を私は第1次ITガジェット戦争と呼んでいます。この戦争での主役はハードウェアで、デバイスが「強力な通信機能」を持つかどうかが勝負の分かれ目となりました。よって、PCもスマホも通信機能をもっていたが故に終始優位に個別撃破を繰り返すことができ、一方で通信機能が出遅れたPDA、デジカメ、ミュージックプレーヤー、電子手帳は通信機能を持つPCやスマホに駆逐され、最終的には「1つの機能」として吸収され、単体でのボディを失ってしまいました。スマホやPCを見ると多くのソフトウエアや機能があります。その1つ1つが、第1次ITデバイス戦争の歴史であり、証拠であり、結果でもあるのです。当時、私は優秀なITガジェットを持つ多くの企業と仕事をしていました。数多くの優秀なガジェットが世の中に出ていきました。そして多くの優秀なガジェットがPCやスマホに吸収されていきました。しかし日本企業は優秀ですし、日本のエンジニアは優秀です。PCやスマホの中に脈々と生き続けているアプリやソフトを見るたびに「すごいなやっぱり・・・」とその質の高さに誇りすら感じることもあります。

そして現在、デバイスでの競争において、これ以上のイノベーションが難しくなっています。しかしだからといってITは止まりません。新しい戦争が始まっています。今度はデバイスを問わないソフトウェアの戦争であり、このGmailのニュースもまたその過程を示すものでもあります。私は今の争いを第2次ITガジェット戦争と呼んでいます。

 

■第2次ITガジェット戦争はソフトウェアが主役

第2次ITガジェット戦争の主役はソフトウェア、それもプラットフォームを狙うソフトウェアの戦いであり、具体的に言えば「OS」の覇権をめぐる争いです。OSといえばWindows vs Mac OSAndroid OS vs iOSと思うかもしれませんがこの戦争はPCとスマホのOSが入り乱れての大戦争になっています。

例えばPCでは唯一無二の世界最強の存在感を誇示するWindowsスマホでは完全に出遅れてマイナーOSに成り下がっており、一方でAndroid OSはスマホでは頂点に君臨していますが、PCではOSを持ちません。AndroidのオーナーであるGoogleはPCへの挑戦上として上述したChrome OSを発表していますが、まだまだ対応ソフトの問題も多くマイナーOSの一員です。では誰がこの戦争で生き残るのでしょうか。

 

■PCとスマホが求める「モビリティ」は「場所を問わないどこでも消費」

第1次ITガジェット戦争が通信機能の有無で勝敗が決してきたと書きましたが、現在の第2次ITガジェット戦争というソフトウェア戦争では何がKeyとなるのでしょうか。私は「金融決済」だと思っています。FintechやBitcoinApple payやSamsung Payという単語もトレンドになっていますが、その流れや勢いもまた第2次ITガジェット戦争のコンセプトを明確にしていると思います。

通信機能を持つデバイスというのは携帯性に優れています。通信ネットワークが充実した時代に入り、「モビリティ」を時代がもとめてきたがゆえにPCやスマホはその強みを活かして勢力を拡大することができ、この世界で生き残ってきました。ですから「どこでも消費ができる」という利便性を持つ「ネット決済」もまた必然的に時代の必須事項になってきます。

 

■LINEとFacebookが先行するネット決済、メールには厳しい現状もGmailが変えるか。ネット決済が加速するその時代の流れに沿うように「どこでも消費ができる」という「どこでも」を持つコミュニケーションツールも同じスピードで成長してきました。その代表格がGmailの所属するメール、LINEなどのチャットアプリ、FacebookなどのSNSアプリです。特にLINEやFacebookなどは早くからコミュニケーション能力の強化の一環として、決済機能や支払い支援機能、ネットショップ支援機能などを搭載し、金融プラットフォームとしての存在感をアピールしようと努力をしています。日本ではFacebookは下火であるというニュースを最近よく聞きますが、東南アジアではFacebookはOSに匹敵する巨大プラットフォームの存在感を持っています。恐らくその勢いは今後更に増していくことでしょう。

一方でメールというものはコミュニケーション能力は高いのですが、ウイルスメールなどのセキュリティ面の不安があったり、ユーザーの確認頻度など速報性に弱いせいもあるのか金融関連は今の所完全に出遅れています。しかし、本当はAndroidiOSも使うにあたってはメールアドレスを作ることになりますので、LINEやFacebookに比べたらユーザー数という意味では圧倒的なシェアを持つ巨象であり、ポテンシャルそのものはものすごく大きなものを持っているのです。

それ故に、今回、メールカテゴリの中では世界最大級のユーザーを持つメールプラットフォームであるGmailが金融機能を持つという出来事は、眠れる巨象が「どこでも消費できる」という時代のニーズに対応するプラットフォームへ巨大な爆弾を投げ込みながら侵攻開始したようなもので、これによって第2次ITガジェット戦争が更に混戦で熱くなっていくのは間違いありません。

 

「お金」という人間の欲望の1つをどう取り込めるかが、プラットフォームの覇者になるために避けて通れない重要な課題です。第2次ITガジェット戦争の行方、果たして誰が勝者になり、誰が勝者に吸収されていくのでしょうか。未来を想像するだけで、とても楽しみです。