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G1ラボ - デジタルマーケティングを研究する為の備忘録

これからのデジタルマーケティングは技術と方法に加え、OfflineとOnline、HardwareとSoftware。6軸+αの時代を生きるデジタルマーケッター

人口6500万人のタイ。正念場を迎えているWEB広告ビジネス。

人口10億の国、人口1億の国、人口6,500万の国。 

数字だけ見ると物凄い市場規模の差です。例えば中国。富裕層だけで1億人を超すというニュースを時折見かけます。日本の人口が1億2千万ですから、日本人全員が富裕層になっているようなもの・・・と考えると想像を絶するパワフルな市場です。

人口の多い国で物を売る場合、1つのブランドがカバーできる人口を考えることがあります。例えばある携帯ブランドがシェア10%であれば、携帯購入可能層の10%分の人口がカバーできている人口と暫定的に考えることができます。つまり人口というパイの大きさがビジネスの大きさにかかわってきます。

前回の投稿ではタイで成功した日系ポータルサイトのお話をしました。今回はタイにおける広告メディア、特にWEBメディアにおける広告ビジネスの現状を書き留めてみたいと思います。成功の裏にある厳しい現実があるのも事実です。

 

ポータルサイトでビジネスをしたいと思いたくなる土壌

前回紹介したSistacafeの成功にあやかろうと、類似・または何かの分野に特化したポータルサイトを作り始めている日系企業も増えてきています。記事を広告扱いで配信する場合、日本では(広告)と書く必要がありますが、タイのネット記事広告ではまだまだその文化は根付いていません。そういう意味で記事広告が自然体で作りやすい現在、記事広告関連の広告産業は儲けどころのタイミングにはいます。勿論成功しているポータルサイトも続々出てきています。

Facebookという超優良集客プラットフォームの存在 × コンテンツ力という強み

 WEBの場合はFacebookページと連動させることでFacebookからの流入が容易です。Facebookはタイにおけるキング・オブ・モバイルでFacebookでの「Like!」が集めやすいプラットフォームです。日本で「いいね!」をもらうよりもタイをはじめとした東南アジアで「Like!」をもらうことの方が比較的容易です。Facebookのような集客ツールの充実が、メディアオーナーからみたら「ポータルサイトでいけるんじゃないか」とその気にさせる一打になっています。

今のところ、成功しているポータルサイトとそうでないポータルサイトを見ると、日本、タイ問わずやはり記事広告の品質の差と人気度合いは比例しているのかなと感じます。この点についてはコンテンツ重視の日系企業のアドバンテージとなっているのは間違いありません。

 

■競合過多で淘汰もはじまっている

しかし、その一方で競合激化による淘汰も始まっています。紙媒体を見てみるとフリーペーパーの先駆者達は先行者利益によって広告市場シェアをしっかりと確保していますがやはり苦しそうなのは後発組、広告掲載媒体の数が増え、広告主の奪い合いが始まっていて値下げ合戦にも直面しはじめています。

紙媒体の辛いのは印刷コストで、発行部数=広告媒体の価値でもありますので、必死に印刷部数を上げていかなければいけないコストリスクがある一方で、競合媒体が増えて価格下落が進むという非常に厳しい時代に入っています。実際、ローカルでは名の知れた紙媒体が発刊中止、倒産という事態が起き始めています。

ネット媒体も今の媒体の増加速度からみればこのシチュエーションに入ってくるのは早いというか既にその傾向が出はじめてていると判断できます。

常に集客し続けないといけないプレッシャー

 タイにおいてアドネットワークの広告枠を置いている中堅のメディアで更新が止まっているサイトを最近よく見かけるようになりました。広告主から魅力あるサイトと判断されて広告出稿を得るためには、広告主にアピールできるだけの集客数が必要となります。紙媒体の発行部数は自称なので、その発行部数を広告主が知ることは難しいわけですが、ネットの場合は様々な無料サービスによっておおよそのアクセス数が誰でもわかってしまい、ごまかしがききません。そこでWEB広告、例えばキーワード広告やディスプレイ広告、Facebook広告などに投資をして集客を積極的に行う必要があるわけですが、その費用が大きな負担となります。

自分たちのポータルサイトからの広告収入が多くなければ、集客用の広告出稿費で収入が相殺されるような事態になり、最悪は赤字になるリスクがあります。そうなるとサイト運営を支える人件費を捻出できなくなり、必然的に人は去り、いよいよサイト運営が困難な状況に陥っていくわけです。

 

■事業の継続性は市場のポテンシャルを見極める事ができるかが鍵

それなら頑張って集客を増やす努力をするべきだ!という考えになるわけですが、タイという国のポテンシャルも踏まえた上で努力を継続するかどうかを考える必要があります。

タイの人口は約6,500万人と日本の約半分ちょっとです。決して大きなマーケットではありません。その決して大きいわけではないマーケットの中でターゲットとなる何割かのユーザー、そしてその中でも頻繁にネット接続をする何割かのユーザーたちが1日に数十分から数時間を費やすであろうネットサーフィンタイムの中で自分たちのサイトが閲覧に値すると「選ばれる」必要があります。

これはかなり難易度の高い話です。既に人々のルーティンとしてFacebookが存在しており、ユーザーの多くのネットサーフィンはFacebookを開いている時間、またはネットコンテンツの王様である動画、Youtubeへの時間が圧倒的に多いのです。その間隙を縫って自社のサイトに呼び込んでくる努力が必要なのです。この必要とされる努力は尋常なものではありません。なぜなら既にブックマーク入りを果たしている優良競合サイトがあるわけなので。

繰り返しますが、そこに割り込むには相当な努力が必要で、そこには覚悟も必要です。覚悟とはお金といってもいいでしょう。Facebook広告やWEB広告を通じた集客数は投資額次第の仕組みです。お金さえ払えば来訪者の質は別として、ある程度リーチや集客は見込めます。しかし結果として効果があったかどうかは、集客した後に「欲しいもの」があるかどうかです。せっかく集客できても来訪者が魅力を感じなければ再び来てくれることはありません。訪問者の日々のルーティンに入り込めるだけのパフォーマンスをサイトが見せる必要があるのです。投資しても全然ルーティンが増えない・・・という事もよくある話なので、お金を「覚悟」と見ているわけです。

 

■出口戦略をどう考えるかがポイント

紙媒体はデジタル化の流れで部数は今後減少していく事は間違いありません。しかし紙がゼロになるというのはなかなか考えにくく、紙とネットの両方を持ち、それぞれでシェアを持っているメディアは今後も取りこぼしを最大限減らす事ができ、安定して残っていけると思います。

その一方でネットメディア専業の場合、今後のビジョンが大事になります。ポータルサイトで集めたデータを元に新しいビジネスを起こすというのが多くの企業では次のステップになっていますが、新しいビジネスを起こしてもなかなかうまくはいっていないのも現状として多くの企業で見られます。

・・・というのも、ポータルサイトというビジネスはコンテンツ事業です。強みはコンテンツ力です。コンテンツ発信で成功したのだから、蓄積されたコンテンツを活かして・・・というビジネスモデルはコンテンツホルダーからみれば夢のある話ですが、蓄積されたコンテンツをそのまま”活かされたい"とユーザーが本当に思っているかどうか?というのをしっかり見極める必要があります。

コンテンツは旬が大事で、旬ではないコンテンツにどれだけの価値があるのか?という部分もあります。旬を維持し続けるためにはコンテンツの適材適所と共に、適切な時間を見極める必要があるのです。それが「記事の寿命」の話題とも繋がってきます。記事の寿命をケアできているWEBメディアであれば恐らくサイトそのものの寿命は長くなっていくことでしょう。しかしそれを新規事業で活躍させられるかというとまたそれは違う話になります。コンテンツ配信業者が同じコンテンツで違う配信事業を行う、または類似事業を行うというのはお互いのシェアを削りあう、ユーザーを奪い合うという事になる可能性もあることを忘れてはいけません。

また人の部分も重要です。サイト運営の人材を新しい事業に持っていくには2つのリスクがあります。1つは既存事業へのインパクト、もう1つは成功者を連れていくことでの新しい事業の失敗です。前者は言わずもがなですが、後者の場合は既存事業の成功事例に引っ張られすぎて、またその人材のやれる事に左右されすぎて斬新さを見失って市場のニーズを掴みきれなかったというケースです。同じようなサービスを連発するIT企業をよく見かけますが、得意分野で特化しているといえばそうなのですが、新規事業立案者が常に同じなのだろうという見方もできます。投資家がいる場合は、そこがリスクファクターになったりすることもあります。

このような背景から、WEBメディアに関しては出口戦略が重要になってきます。事業を継続しながら新規事業を立ち上げていく方法も1つの案ですし、ポータルサイトが旬なタイミングを狙って最高価値を持った状態で売却をし、投資した金額以上のものを回収するというのも1つの案です。

事業を始める時にどのように出口を儲けるかも一緒に考えて動く事が、うまくいかなかった時の被害を可能な限り削減する事ができます。

 

また頃合いをみて各メディアのアクセス状況などを見ながら定期的にこの話はしていきたいと思っています。